お尻に快適なお湯の温度は?

信号機
実験は何度も何度も繰り返されました

次なる問題は、お尻にあたって気持ちいいと感じる快適なお湯の温度。これには開発スタッフ自らが、実験室の中で、お湯の温度を0.1度ずつ上げてお尻に当て、試しました。

上限温度を設定するため、我慢できる温度のぎりぎりのところまで実験を繰り返しましたが、高温での実験には「熱くて飛び上がるような感じ。もう、いやだ!」と思ったそうです。それでも、1日16時間交替で、技術者たちはお湯を浴び続けてデータを取りました。

さらに、寒い所、暑い所での使用が可能かどうかを調べるため、零下10度の寒冷地やプラス30度の猛暑の条件の下で使うことを想定した実験も行われました。両極端の状況での実験で、体調を崩す人もあったそうです。

苦労に苦労を重ねた実験の結果、お湯の温度は38度、便座の温度は36度、乾燥用の温風は50℃が最適であることがわかりました。

次は、どうやって
お湯を的に当てるか

ノズル
お湯をどうやって正確に的にあてるか?も大きな問題でした

次の課題は、便器から出たお湯をどうやって的(肛門)に当てるかが問題でした。開発スタッフの1人は、試行錯誤の日々が続いていたある日、たまたま道ばたに停まった車からラジオのアンテナが伸びてくるのを見て、便座から一直線に伸びるノズルを設計することを思いつきました。つまり、ノズルの先端に噴射口を取り付け、的に近づいてから発射することで、当たりやすくするというわけです。

次に、お湯を出す角度を決める作業です。60度、50度と少しずつ角度を変えて実験をしたところ、43度ならどんなお尻でも確実に当てることができると判明しました。さらにお尻を洗った温水がそのまま便器に落ち、ノズルが汚れない設計が可能になりました。

最大の難関。お湯の温度をいかに維持するか

最大の問題は、「38度のお湯の温度をいかに維持するか」ということでした。それまで使われていたのは、バイメタルというもので、適切なお湯の温度維持ができていませんでした。

開発スタッフの間から、「ICを使いましょう」という提案が挙がりました。さっそく、家電メーカーに問い合わせたところ、「直接、水を使うなんて、無理な話!漏れて漏電したら大変なことになりますよ」との返答。

でも、スタッフは、「安全な回路を作ってみせる」とICを取り寄せ、回路作りに取り組み始めました。実験中に自分の肘がICに触れ、漏電が起き、なんと100ボルトの電流が体を流れるという事故が起こったこともあったそうです。「死ぬかもしれない」と思ったそうですから、まさに命がけの開発です。人の尿は、塩分を含む伝導体。漏電すれば人体が危ないわけですから、この時点で開発は行き詰ってしまいました。

意外な発見で、一気に問題解決!

信号機
雨にさらされても正確に作動し続ける信号機をみて、開発スタッフは思いついたのです

ある雨の日、交差点待ちで信号をぼんやり見ていた開発スタッフの1人は、ハっとしました。信号は、まさに風雨(=水)にさらされながら、正確に作動し続ける電気製品。これだ!と思ったのです。

その信号機を製造している信号機メーカーをたずねました。そのメーカーは、「ハイブリッドIC」というICを特殊な樹脂でコーティングする技術を持っていたのです。ありがたいことに、メーカーの担当者は、「自分たちの技術が広がるのであれば」と協力してくれました。スタッフは、ハイブリッドICを取り寄せて、回路につけてみました。そして、その上からプラスチック製の強化カバーで覆い、防御システムにして、尿と同じ塩分を含んだ水を浴びせてみました。・・・・問題は起きず、こうして漏電の問題は、克服されたのです。

    

 

                   でも更なる問題が、、(後編)